がくちょうレポート

テクノロジーと人間

文化にイノベーションを起こすための4つの実装手順について

前回の記事で、文化にイノベーションを起こすための4つの要素が理解できたと思う。

 

改めて整理すると、

  1. 経典を汎用化する
  2. 汎用性が高い推奨行動を定義する
  3. スケーラビリティのあるオンライン交流のUXを開発する
  4. 評価システムを実装する

の4点である。

 

今回の記事では、それらを1つずつ、丁寧に実装フェーズに移していく。

 

⑴ 汎用性が高い推奨行動の定義

最もプライオリティが高いのは、この課題になる。

 

いや、もはやこれが全ての原点と言ってもいいだろう。ここが定義できれば、細かいUXが多少悪かろうが、おそらく全体が機能する。

 

今回は、私が運営するファーストペンギン村というプロダクトをケーススタディにしてみよう。

 

BEの定義

 

まず、プロダクトを通じて「どういったBEを増やしたいのか」という部分を明確にする。

 

複数の候補があり得るが、私としては

 

「インタレストワーカーを増やす」

 

というのが目的として定義できる。

 

これはずっと自分が言いたかったことで、10年間あまり変わってこなかったように思うことだ。

 

よく使われる言葉で言えば、「好きなことで稼ぐ」とかになるが、好きなことというのは非常にあいまいで誤解を生むケースが多いため、私は使用しない。

 

代わりに、「興味関心で稼ぐ」という風に置き換えて、インタレストワーカーという風に定義してみる。

 

つまり、興味関心があればそれだけで稼げるんだよ、というような事を言っているし、逆に言えば「興味関心を軸に仕事をしようぜ、稼ごうぜ」というメッセージでもある。

 

BEを実現するために最も重要でコアになる行動を列挙

では、この「インタレストワーカー」というBEを実現するために、必要な行動は何だろう?

 

それらの行動の中で、

  • シンプルで汎用性が高い
  • 化内完結性が高い

という要素を持ったものを導きだすイメージになる。

 

今回は吟味する部分はカットするが、コア行動は

  • 自分が興味がある技術(何かを上手くやるコツ)についてアウトプットする
  • 興味があるかもしれない技術についてインプットする

の2つ、つまり「インプット⇔アウトプット」に限定される。

 

推奨行動の定義

最後に推奨行動としてまとめる。

 

まず、2人1組になる。

そして、インプットかアウトプットかを決める。両者ともにインアウトがある場合は、30分交代で60分行う。

片方がインしか無い場合は、アウト⇒インで30分で終了する。

 

アウトプット側は

事前準備:本屋に行く⇒興味のある本を選定してくる

当日:興味のある本(またはキーワード)について1つを紹介

(例:メタバースVRです)

①何をうまくやるために、その技術は有用だと感じるか?相棒の助けを借りて言葉にしてみよう。

(例:距離が離れていても、同じ方向性に向かって協働できる人と繋がるために有用)

②それをうまくやれる人が増えると、どんな良い生活が送れるようになる?相棒の助けを借りて5つ以上挙げてみよう。

(例:住居に関係なく、仕事ができるようになる。好きな場所に住めるようになる。通勤が無くなる。無駄が少なくなって拘束時間が減る。好きな人をピックして仕事仲間にできるし、嫌いな人とは付き合わなくて良くなる。)

③上記の5つの「良い生活」の実現のために、既に自分が取り組んできた事を、相棒の助けを借りて10個見つけよう。

(例:オンラインでセミナーやコンサルを受注する。好きな人に仕事を外注して上手く回す。好きな人しか集まってこないように発信をする。オンラインで受注できるようにコピーを書く。メルマガにリテンションする。ビジョンを共有して外注メンバーを集める。タスクを分類して効率を上げる。オンラインセミナーの満足度を上げるために会場にメタバースを使う。ワークショップを混ぜることでオンラインセミナーの満足度を上げる。ブログで専門性をアピールする。)

④自分の中には、どんなコツ(経済合理性のタネ)がありそうか?相棒の助けを借りて5つのコツを言語化してみよう。

(例:オンラインセミナーにうまく集客するコツ。自分のやりたいことをうまく伝えて外注メンバーのモチベーションを上げるコツ。メルマガで集客するコツ。オンラインで人を育てるコツ。オンラインセミナーからバックエンドを受注するコツ。)

の4つのワークを、相棒の助けを借りて、時間内で可能な限り完成させよう。

 

上記のペアワークを、推奨行動とする。

 

スケーラビリティのある交流方法の開発

次にこの課題に着手する。

 

これは、簡単に言えば「ユーザー同士で活発に情報交換させることで、経典の刷り込みを行い、評価システムへの参加を促したい」という目的が根底にある。

 

ユーザー同士で経典に対しての意見交換が増えるほど、解釈は正確かつ深くなり、その周りに対しての評価システムへの参加を促せる結果に繋がる。

 

そのためには、経典の理解度が高い人間をまず中心に創り上げ、その人間と周りが交流を深めやすいようにすれば良い。

 

この時に、掲示板システムでN対Nの膨大な情報のやり取りを行おうとすると、非効率的かつアクセシビリティが下がる。

 

そこで、同期的に「nagisaの会」「やしきの会」などの理解度が高い人間が、新人や理解度の低い人間に対して情報を提供するような場所を設けて、それを放送する形にする。

 

さらに、終了後に「学びと感謝と行動」を書き込ませることで、「学習⇒交流⇒行動促進⇒周囲への情報共有」という4つの効果を実現する。

 

人数が増えたら、開催側の人数を増やしたり、開催数自体を増やすことで対応できる。

 

もちろん、定義した「推奨行動」に関しても、非同期的ではなく、メタバースを使用して同期的に実施する。

 

まとめると、

  • メタバースに会場を設置し、指定の時間に「推奨行動+交流要素の強い何らかのイベント」を実施する
  • 推奨行動は会場で2人1組になってペアでワークを行うものとする
  • イベントも自由に参加できるグループワーク系のものとし、理解度が高い人間がファシリを行う形にする
  • 同期的な交流を配信することで情報を非同期的にも共有する
  • イベント後に指定フォームに投稿をさせることで、非同期的な交流も当事者間だけで一定量発生する仕組みにする
  • 募集用のスレッドは目的的なので活用できるように設置しておく

という風に設計できる。

 

これで、交流は事実上、大量に発生してはいるが、自分に関係ない通知は一切来ないという状況を作れるし、そもそもチェックしなくても良いという風な状況にできる。

 

チェックする場合は、確実に「何らかの目的がある」投稿に限定されるため、少なくともチェックする意味を感じることが可能。

 

評価システムの実装

次はこちら。

 

ここは細かいUXやUIまで踏み込んで考える必要がある。

 

まず、要素分解して

  1. トリガー
  2. アクション
  3. リワード
  4. インベスト
  5. 内発回帰

の5つの要素ごとに考えていく。

 

トリガーの実装方法

トリガーとは、通知等でユーザーにアクションを喚起する施策の事を指す。

 

トリガーの種類は大きく2つ。

1つは「まだ推奨行動を行っていないユーザーに対して、ファーストアプローチをするためのトリガー」で、

もう1つは「推奨行動を行ったことが、次の推奨行動を促すことに繋がるようなループトリガー」である。

 

まず、ファーストトリガーについて検討する。

 

ファーストトリガーはシンプルに、運営からの告知で問題ないように思う。

週に2回程度、効果事例やイベントの告知など、推奨行動に参加したくなるようなストーリーとセットで告知を行う。

 

ループトリガーは、できれば自動化したい。

これはつまり、「やるほどに、やりたくなる」という仕組みをどう創るか?という問題である。

 

例えばだが、「知り合いが増えるほどに、参加メリットが高くなる」というネットワーク構造を作れれば、それをトリガーに連結するだけでループトリガーが完成する。

 

今回は

「過去にペアワークを一緒にやったことがある人と、一緒に謎解きチャレンジに挑戦することで、ランダムで何らかのリワードとインベストが増える」

という施策に決定する。

 

これによって、ペアワークに参加するほど、「会場に行った時にチャレンジを回せる回数が増える」という状況が発生するため、「できるだけ参加して推奨行動をしよう」というトリガーに連結させることができそう。

 

アクションの実装方法

アクションに関しては、「いかにアクションコストを下げるか」という課題に取り組む。

 

これは、「場所を指定する」「時間も指定する」という施策が有効そうだ。

 

これにより「自分から発起して、人を集めたり場所を用意したりしなくても良い」という条件が整うため、逆にアクションコストを下げる方向に働いている。

 

(最初は、場所と時間を自主的に決めた方が良いか?つまりUGC的な方が良いか?と考えていたが、それは精神的な自発性が必要だし、時間の調整や場所の準備も必要になるため、逆にアクションコストを上げてしまうことが判明している)

 

指定開催にすれば、自発性も必要なく、投稿も必要なく、調整も必要なく、失敗リスクもなく、場所の準備の必要もない。「時間を合わせる」というアクションコストしか発生していないため、全体で見れば大幅にコストを引き下げることができる。

 

さらに、会場のURLを直接DMで時間に送付することで、アクションコストを下げることもできるだろう。

 

逆に、これ以上のインパクトのある施策は少なそうだ。

 

リワードの実装方法

次はリワードだ。

リワードは、端的に言えば推奨行動を実施した際に得られる報酬のシステムだ。

 

これは、即自的で明確な方が効果的になる。

 

まず、推奨行動を行ってフォームから学びを投稿すると、自動的に「2ペギー」が貯まる。これは、村への貢献ポイントであり、ペギー長者に対しては不定期で特別な抽選が開催されたりなど、優遇処置がある。

 

さらに、ペアチャレンジを実施することで、ランダムでアマギフが当選する。

 

これによって、「確実に発生するリワード」と「ランダムで発生するリワード」の両面を提供できる。

 

フォームからの投稿は、google formを経由して相手に伝わり、その感謝メッセージ自体も推奨行動に対してのリワードになる。さらに、フォームから「感謝を伝えたい相手」を選択して投稿することで、相手に1ペギーをプレゼントできる。

 

週に1回、ファーストトリガーの告知に合わせて、先週分の投稿の中から「ナイペン投稿」が選出され、表彰の言葉とアマギフがプレゼントされる。これも、推奨行動を行うリワードになる。

 

インベストの実装方法

次はインベストの実装について検討する。

インベストは、ユーザーに何らかの投資をさせることで、サンクコストを発生させるような取り組みを指す。

 

少なくとも上記のリワードにおいて

  • ペギーは蓄積型であり、推奨行動にインベストするほどに、対価として貯まっていくため、これまでの投資を無駄にしたくないというサンクコストが発生する
  • 蓄積したペギーは、自分の村での実績や信頼を表すものに変わるため、せっかく積み重ねた信頼値と優遇処置を失いたくないというサンクコストが発生する
  • 積み重なった感謝のメッセージも、自分の信用と信頼を保証するものに変わるため、失いたくないというサンクコストが発生する

という3つのインベスト効果を担保できている。

 

内発回帰の実装方法

上記のトリガー⇒アクション⇒リワード⇒インベストの効果によって、推奨行動を行い続けるメリットは外発的に担保されている状況になる。

 

あとは、「成果報告!こんないい事あったよ!」の投稿BOXを作成し、月に1回の配信でアマギフをプレゼントしまくる。

 

投稿フォーマットとして、

  • ①最近、あなたに起こった「良いこと」は何ですか?
  • ②それは、あなたがどんなことを意識して行ったから起こりましたか?
  • ③その「良いこと」に繋がるきっかけになった、村の人に感謝を伝えてください

という風にする。

 

これを投稿するたびに、投稿者は

 

「村の中で推奨行動を通じて人と関わることで、結果として良いことが起こった」

 

という事をメタ認知することになり、回数を重ねることで行動に内発的な動機が発生していく。

 

経典の汎用化

最後に経典の汎用化について触れる。

 

これは、スライド資料を作ってそちらで説明をして、徐々に汎用性を高めていくという手順が良いだろう。

 

上記の手順を持って、プロダクトの構築にあたることとする。